嫉妬

最近辻田さんは、ロナルドさんのところのジョンくんに夢中である。
前々からそうだったのかもしれないけど、このところさらにだ。
紙にジョン君の絵(写真みたいに上手い)を描いたり、手に入れたばかりのスマホにジョン君の写真を送ってもらっては、どうだ、かわいいだろうとドヤ顔で見せてくれたりする。みせてくれるのはちょっとかわいいなと思うけど、ジョン君ばかり見ているのはさみしい。なので、今日、僕はある作戦を決行することにした。
……なんだそ、それは」
丸くうずくまる僕に辻田さんが不思議そうに言う。
「ジョン君のモノマネ!ヌー!ぐえっ」
なぐられるぼく。
「バカかお前、ぜんぜん似てない。天と地ほどの差がある。人生やり直して来い」
「辛らつ!うえええん僕だって辻田さんに愛されたいんだぁああ」
恥も外聞もなく叫んで顔を覆う。辻田さんは何にも言わない。あんまり子どもっぽい言い方だったから呆れられてしまっただろうか。ちらっと指の間から顔を見てみると、少しうつむいていて、恥ずかしそうな顔をしている。かわいいな。
「お、おまえのことは、嫌いじゃない、ぞ……
……!」
あっ、僕愛されてる……。一生懸命出来る限りの好意を伝えてくれる辻田さんに、僕の胸は高鳴った。ジョン君への嫉妬が吹っ飛んでいくの感じる。
……くだらないことを言っていないで、さっさと作業の続きをするぞ」
……うん。あの」
「なんだ」
「好きです」
「わかったから机に向かえ!」
「うん!」
僕はニコニコしながら机に向かった。今日の原稿ははかどりそうだ。